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コラム~肩関節脱臼①~

今回は肩関節脱臼についてお話させて頂きます。

肩関節は人体で最も可動域が大きい関節であり、脱臼しやすいとされる部位です。

最初に簡単に肩の構造について説明させて頂きます。

 

まず、肩関節は5つもの関節から成り立つ複合体であり、これらが協調的に働くことで安定性を保ちつつ自由度の高い肩の動きを可能にしています。

その5つとは、

①肩甲上腕関節

②胸鎖関節

③肩鎖関節

④肩甲胸郭関節

⑤第2肩関節(肩峰下関節) です。

 

詳しい場所はこちらになります。

 

そして、実際に脱臼するのは①肩甲上腕関節です。

そもそも脱臼とは関節面同士の適合性が完全に失われたものとされ、自然に整復した状態を亜脱臼といいます。

 

この肩甲上腕関節を構成する組織には、

①肩甲骨の関節窩と上腕骨頭

②その周囲にある線維性組織である関節唇、関節包靭帯

③さらに②の外周を取り巻く腱板と呼ばれる腱組織   があります。

 

更にこの組織たちは、静的な安定性と動的な安定性を保つ組織として分類できます。

静的、つまり動かしていない状態での安定性を高めてくれているのは関節唇、関節包、靭帯です。

関節唇とは、その名の通り肩甲骨の臼状の関節面の外周を唇の様に縁取っている組織の事です。この関節唇があることで関節の接触面積が増え、安定性を高めてくれています。

 

動的、動かしている状態での安定性を高めてくれているのは、主に棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という筋肉たちです。

この4つは腱板とも呼ばれ、上腕骨を骨の軸に対して回旋させる作用のある筋肉たちです。

この筋肉たちはいろんな方向から上腕骨頭をとりまくように付着しています。

そのため、動作の時に骨頭を関節面に引きつけることで安定性を高めてくれているのです。

また上腕二頭筋も骨頭の動きを制動してくれています。

 

また、筋肉にはForce coupleと呼ばれる筋肉同士の仲間が存在します。

この仲間である複数の筋肉が協力して働くことで単一の筋肉の負担を減らしてくれています。

肩関節では、体の横から腕を開く外転運動の際に三角筋と棘上筋がForce coupleを形成しています。

この2つは同じ外転の働きをしてくれますが、最初に腕を開いていく際には棘上筋が骨頭を関節面に引きつけ、肩甲骨に対して上腕骨の関節面が滑る動きを助けています。

その上で、筋肉自体が大きく、発揮するパワーも大きい三角筋が外転運動を可能にしてくれているのです。

 

このように、肩では色々な組織が協調的に働くことで、大きな運動範囲を持ちながらも安定した運動を可能としているのです。

 

今回は肩関節の解剖についてお話しさせて頂きました。

次回は、実際にどのようにして脱臼が起きるのかを説明させて頂きたいと思います。

コラム~前十字靭帯損傷④~

今回は手術後の膝前十字靭帯損傷のリハビリテーション(以下:リハビリ)についてお話しします。

 

手術により、構造的な膝の安定性は獲得出来ました。

しかし、手術したからといって術後すぐには自分が思っているように自由に膝は動いてくれません。

そこで今度は新たに再建された膝を自由に動かせるようにリハビリをして、日常生活に不安なく活動出来るようにし、徐々にスポーツ復帰を目指していきます。

 

ここではリハビリについて3つに分けてお話ししていきます。

①手術後日常生活に向けて、②スポーツ動作開始に向けて、③競技復帰に向けて

 

①手術後日常生活に向けて

この時期は手術後の炎症管理をしっかりと行う時期です。

アイシングを行い炎症症状の改善を図ります。

また膝は体重を支える関節です。

炎症に応じて歩行時は松葉杖を利用します。

更に、サポーターを付けて行動してもらいます。

 

炎症や時期に応じて徐々に可動域を増やしていきます。

しかし、靭帯はまだ身体に馴染んでおらず、曲げ過ぎたり伸ばし過ぎたりすると手術して靭帯を留めた部分や、靭帯が緩んでしまう事があります。

そこで1ヶ月位かけて120°位まで曲げられるようにしていきます。

伸ばしに関しても同じように徐々に伸ばしていきます。

 

筋力は手術する事で低下してしまいます。

炎症が増強しないように筋力トレーニングしていきます。

 

②スポーツ動作開始に向けて

2ヶ月程度すると日常生活でのサポーターを外し歩く事は可能になり、徐々に自転車やジョギングが可能になっていきます。

3ヶ月すれば靭帯の強度もより強くなり筋力トレーニングもハーフスクワットやランジなどの動作も開始する事が出来ます。

曲げも140°位は曲げる事が可能になります。

4ヶ月程からダッシュの5070%の強度で直線を走る事が可能になります。

また、重りを使ったレッグエクステンションも徐々に開始していきます。

 

③競技復帰に向けて

45ヶ月頃から8090%で走行は可能になります。

曲げる角度も正座を目標に曲げる練習を行っていきます。

またサイドステップやクロスステップなどのステップ動作も徐々に開始します。

怪我をした際に接触せずに動作の中で怪我した場合はこの動作練習が重要になります。

一つずつ動作を確認しながら細かな動作が行えるようにしていきます。

更に軽いジャンプ動作や専門種目の基本動作も開始していきます。

バスケットなら軽いドリブルやシュート、サッカーなら基礎練習などです。

 

6ヶ月を過ぎた頃にはダッシュが行えるようになっていきます。

動作練習もスピード、強度を上げ、徐々に動作中にボールなどを織り交ぜて専門動作の練習を開始していきます。

ジャンプに関しても連続ジャンプなど強度を高めていきます。

この頃からチームのウォーミングアップに参加したり、強度の低いチーム練習に部分的に復帰していきます。

対人に関しても動作を確認し少しずつ練習を開始していきます。

再発のリスクを減らすためにテーピングやサポーターを巻く事もあります。

 

7ヶ月以降は復帰に向けてリアクション動作や対人練習を積極的に行っていきます。

チーム練習へは数的優位な局面から数的不利な状況に移行し、少しずつ試合へと復帰していきます。

 

時期はあくまで目安となりますが、状況によって変更していきます。

復帰後も再発予防のために筋力トレーニングや動作練習をしていく必要があります。

 

これらに関して当院では術前から競技復帰まで理学療法士がリハビリを行っていきます。

トレーニングセンターも併設しているので、怪我する前の状態に安心して戻れるようお手伝いさせて頂きます。

今回で膝の前十字靭帯損傷に対してのお話は最後になります。

コラム~前十字靭帯損傷③~

  前回は膝の前十字靭帯を損傷してしまった後に行われる再建術についてお話をしました。

今回と次回はリハビリテーション(以下:リハビリ)についてお話しをしていきます。

この怪我は手術した後だけではなく、手術前にも約1ヶ月リハビリを行います。

リハビリを行わないで手術をしてしまうと、手術後の予後が良くありません。

 

そこで今回は手術前のリハビリについて①炎症症状の改善、②可動域の改善、③筋力の維持向上、④動作の改善を中心に説明をしていきます。

 

①炎症症状の改善

炎症とは「腫脹(腫れ)」「熱感」「発赤」「疼痛(痛み)」「機能障害」の事を指します。

前十字靭帯損傷をしてしまうと、これらの炎症症状が出現します。

すると膝を動かす事が困難になってしまいます。

この状態で手術してしまうと、手術後も曲げ伸ばしが出来なくなり、再建した靭帯の成熟度が低下してしまうなどの問題が起きます。

その為、手術前に炎症症状を改善する必要があります。

 

そこで行う事は、RICE処置という事を行ってもらいます。

RICE処置とはなにか…

RREST安静、Iicing冷却、CCompression圧迫、Eelevation拳上

単語の頭文字を取ったもので、炎症を改善するには必要不可欠なものです。

 

方法として、氷嚢やビニール袋に氷を入れて、1520分前後患部を冷やしてもらいます。

その後、30分程空けて再度またRICE処置を行います。

怪我をした後は何回もこの処置を繰り返して下さい。

しかし、氷が冷た過ぎて凍傷を起こしてしまう事もあります。

利用する際に水を一緒に入れてあげると少し溶けるので凍傷を防ぐ事が出来ます。

・RICE療法:患部にアイスパックの上からバンテージを巻き付け圧迫した状態でなるべく高い位置にします。

icing(コラム)

②可動域の改善

可動域とは関節が動ける範囲の事です。

炎症が軽減していくと徐々に膝を動かす事が出来るようになってきます。

少しずつ、曲げ伸ばしをして動かしてきます。

 

前十字靭帯損傷を行い炎症により関節を動かさない期間があると徐々に膝関節は硬くなってきてしまいます。

すると膝関節を支える筋力が弱くなり、動作がスムーズに行えなくなります。

そこで、状態に合わせて徐々に可動域を広げるようリハビリを行っていきます。

 ・ヒールスライド:無理のない範囲で手などで介助しながら曲げていきます。

ヒールスライド(コラム)

③筋力の維持向上

炎症や関節の動きを改善していきつつ今度は筋力を維持向上させていきます。

先にも述べましたが、関節を動かさない事で筋力はどんどん弱くなります。

また、手術をすると必ず筋肉はやせ細り、弱くなってしまいます。

その為、手術前にどれだけ筋力を維持向上させる事が出来るかがポイントになっていきます。

だからといって急にスクワットやジャンプ運動を行ってしまうと、また膝崩れを起こしてしまったり炎症を引き出してしまったりする危険があります。

 

まずは関節を動かさないで行う運動を行い、徐々に関節を動かしながら行う運動を行っていきます。

そして体重をかけて行う運動へと進んでいきます。

 ・タオルつぶし:膝の下にタオルを入れ、踵が床から離れないようにしながらタオルを潰すように力を入れます。

セッティング(コラム)

④動作の改善

①~③を改善していきながら今度は歩行を中心とした動作の改善を行っていきます。

怪我をしてしまうと身体には防御反応がおこり本来の動きとは異なった動作をしていきます。

時にその動作は患部へストレスのかかる動作となってしまう事があります。

そこで、歩行の練習など動作改善を行っていきます。

 

以上の内容を中心に手術前にリハビリを行っていきます。

これらは、ただ行うのではなく膝関節に負担がかからないように進めていく事が重要です。

そこで、膝の構造を知った理学療法士の指導の下、関節に過度なストレスがかからないよう一緒に運動を行っていきます。

 

次回は手術後のリハビリについてお話をしていきます。

コラム~前十字靭帯損傷②~

前回に引き続き、膝の前十字靭帯損傷についてお話しします。

今回は前十字靭帯損傷の手術についてお話ししたいと思います。

 

前回もお話ししましたが、前十字靭帯が切れてしまうと膝の安定性が低下してしまいます。

日常生活では階段昇降や方向転換をする時など膝が抜けるような「膝崩れ」という現象が起きる事があります。

またスポーツ選手では競技中にストップやターンなどのステップ動作やジャンプの着地などで「膝崩れ」といった現象が起きてしまう事があります。

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この「膝崩れ」を繰り返してしまうと膝の中にある半月板や軟骨を傷つけてしまい、膝の状態がもっと悪くなってしまいます。

 

そこで、再建術という関節鏡での手術を行います。

当院もこの手術を行い、患者さんの不安を取り除くお手伝いをさせて頂いております。

では、どんな方法で手術を行うのでしょうか。

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この手術の場合、傷口は4つです。

お皿の下に2ヶ所、すねの膝近くの内側に1ヶ所、太ももの外側に1ヶ所です。

太ももの傷は大きなものではないので縫う事はしません。

 

この手術は、自分の腱を使って靭帯を作成していきます。

腱というのは筋肉と骨を繋ぎ合せる非常に強度の高い組織です。

一般的に前ももの大腿四頭筋という筋肉の腱である「膝蓋腱」と裏ももの内側にある筋肉の半腱様筋(場合により薄筋という筋肉も)という筋肉の腱を利用して行う2通りの方法で再建術が行われています。

当院では主に後者の「半腱様筋」を利用した手術を行います。

 

まずは、膝蓋骨の下に2つの傷口を作成し関節鏡を入れて関節内を確認します。

関節の状態を確認後、今度はすねの内側から半腱様筋を取る作業を行います。

 

摂取した半腱様筋の長さが足りなかった場合、薄筋という筋肉から腱を取り除きます。

この接種した腱を直径約810cmの太さにして移植腱を作成します。

 

今度はすねの脛骨と太ももの大腿骨に、ドリルを挿入し移植腱を通す通路を作成します。

その作成した通路に、先端にエンドボタンというものをつけた移植腱を挿入していきます。

このエンドボタンが大腿骨側で移植腱を支えてくれます。

最後に、挿入した部分の移植腱をボルトで固定して再建術は完成です。

 

この様な流れで前十字靭帯の再建術は行われていきます。

これで構造的に安定した膝を作る事が出来ました。

今度は手術して作り上げられた膝を再度自分の膝にするためのリハビリテーションを行っていく事になります。

次回はこのリハビリテーションについて説明していきます。

コラム~前十字靭帯損傷①~

今回は膝の靭帯損傷についてお話します。

スポーツで多い膝の前十字靭帯損傷についてです。

当院ではこの前十字靭帯損傷に対し、関節鏡での手術を行っております。

 

まずは簡単に膝の構造についてお話します。

膝は大きく大腿骨(だいたいこつ)と、すねの脛骨(けいこつ)と、お皿の膝蓋骨(しつがいこつ)からなります。

 

 

これら大腿骨と脛骨の間には関節があり膝の曲げ伸ばしを可能にしています。

この関節は主に筋肉や靭帯にて骨を支えています。

 

その関節の中にある靭帯の1つに前十字靭帯という靭帯があります。

前十字靭帯は主に脛骨が前方にずれる事や回旋や側方へのずれを防ぐ働きがあります。

この靭帯がある事で膝は安定する事が出来,安心して歩行や走行,スポーツ動作を行う事が出来ます。acl01

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しかし、スポーツ活動中に膝を捻ってしまった場合や膝を伸ばしきってしまった場合に前十字靭帯は切れてしまう事があります。

 

 

そうすると膝は不安定になり、動作時に膝が抜けるような不安感に襲われる事になります。

 

そこで、今度は簡単に前十字靭帯の怪我についてお話します。

先程もお話しましたが、スポーツ活動中に膝を捻ってしまった際に前十字靭帯は過度に引き伸ばされてしまうと、靭帯は膝を支えきれなくなり引き千切れてしまいます。

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時には「バキッ」と音が鳴り、膝が崩れてしまう事があります。

痛みと共に時間が経つにつれて膝の腫れが出現してきます。

そして、膝を曲げ伸ばしする事が困難になり歩く事すら困難になってしまいます。

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病院に受診してみると注射で真っ赤な血が抜けます。

MRI検査を行うと靭帯の連続性が失われており、「前十字靭帯損傷」と診断されます。

 

 

 

1ヶ月もすると痛みや腫れなど炎症症状が改善し、膝の曲げ伸ばしは可能になり,歩行も普段通り行うことが出来、日常生活には支障がなくなるようになります。

しかし、方向転換をする際や歩いている時、急に膝に力が入らず膝崩れしてしまったりする事があります。

すると今度は半月板や軟骨などを傷つけてしまう事となります。

 

また、スポーツ活動を再開しようとしても、脚の踏ん張りが利かず、ステップ動作が不安定になり、場合によっては再度膝崩れを起こし他の組織を傷つけ更に状況を悪化させてしまう事となります。

 

この様に、前十字靭帯損傷をしてしまうと膝の安定性が低下してしまいます。

そこで手術を行い、膝が不安定な状態にならないようにします。

 

今回は膝の構造と靭帯の役割と怪我,前十字靭帯を傷つけてしまった場合に起こる事についてお話ししました。

次回はこの前十字靭帯損傷の手術についてお話しします。

肩こりについて(具体的な原因3)

肩こりについてのコラムも5回目となりました。今回も前回に引き続き具体的な原因をご説明していきます。前回までは、姿勢や冷え、眼精疲労や体型にも肩こりの原因が潜んでいることを紹介しました。それらの他にストレスからくる肩こりも存在します。

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 ストレスと聞くと、人間関係や仕事上のトラブルなどを思い浮かべるかもしれません。しかし、例えば舞台に上がって話をしなければならないなど、緊張する場面に遭遇することも、体にとってはストレスです。また、寒すぎたり暑すぎたりと温度や湿度によって不快に感じる事もストレスとなります。

ストレスが強い状況にさらされると、交感神経が刺激されます。交感神経とは、脈拍や呼吸をはやめたり、筋肉が瞬時に働けるように緊張度を高めたりする神経です。

ストレスが過度に加わり過ぎることにより、防御反応により交感神経が働き続ける状態になってしまいます。

すると、全身の筋肉が緊張します。肩こりの原因となる抗重力筋も例外ではありません。更に、血管自体をも収縮させ細くさせてしまうため、筋肉の中では血流障害が起こり、筋肉疲労から肩こりを招きます。

他に体に適していない下着の装着、下着による体の締め付けという原因もあります。

 ボディラインを気にする方は、男女を問わず少なくないでしょう。しかし、気にしすぎるあまり、きつすぎる下着を着けると、肩こりを招く場合があります。

下着による必要以上の体の締め付けは、体にとってはストレスです。また、その装着が長時間になると、体だけではなく心に対してもストレスを与えます。すると、自律神経のうちの交感神経を刺激して、体全体の筋肉の緊張を招き、肩こりにつながったりします。

また、特に女性においてですが、バストサイズとブラジャーのサイズや形が合っていないと、肩紐が鎖骨や肩甲骨を下へ押し下げたり、バストの重さが肩紐を介して鎖骨・肩甲骨にのしかかってしまいます。すると、頭と腕の重さに加えてバストの重さも支えようと抗重力筋は更に働くため、筋肉の疲労から肩こりを招いてしまいます。

 

3回にわたり6つの具体的な原因をご説明しました。日常で頻繁にあり得る原因だと思います。日常生活の中でちょっと意識すれば症状が緩和するかもしれません。

では、これらの原因を踏まえてどのように肩こりを対処していけばいいでしょうか。次回からは当院でも行っている簡単な体操をご紹介していきます。

肩こりについて(具体的な原因2)

肩こりについてお送りしているコラムの第4回目は先週に引き続き、具体的な原因についてご説明します。
前回は、姿勢や冷え、眼精疲労からも肩こりに影響すると説明しました。
今回は3つ目の要因として肥満、なで肩が挙げられます。

 

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肥満やなで肩の人は、通常の人よりも抗重力筋の負担が大きいため、肩こりを引き起こしやすくなります。それらがなぜ、肩こりを引き起こすのかこの回で詳しくご説明していきます。

肥満になると、もちろん腕にも脂肪がついて重くなります。また、肥満になる方の多くは、定期的な運動をする機会も少ない傾向にあるため、抗重力筋の筋力も不足している可能性があります。つまり、単純についた脂肪の分だけ重くなった腕を吊り上げる負担と、それを支える筋力不足のアンバランスが、肩こりにつながると考えられています。

なで肩は、①単純に肩甲骨の位置が正常よりも下がっている場合、②猫背が背景にあって肩も丸くしているために肩甲骨の位置が変化している場合に分けられます。

①の場合は、抗重力筋が常に引き伸ばされている状態にあります。筋肉は引き伸ばされると、筋肉自身が通常持っている緊張が更に強くなる傾向にあり、この緊張が血流障害を招き肩こりへと発展します。

②の場合では、胴体に対して肩甲骨や腕が重力によって前側へ引っ張られる状態(抗重力筋にとっては肩甲骨と腕の重さがより強くのしかかる状態)になります。すると、より強い筋力が要求されるため、筋肉は更に強く働かなければなりません。これが筋肉の血流障害を招き、肩こりにつながります。

 

普段生活している中で意識を少し変えるだけで予防できることもあります。ちょっとした努力を日々行ってみてください。
次回も引き続き具体的な原因をご説明していきたいと思います。

肩こりについて(具体的な原因1)

毎週お送りしている「肩こり」についてのコラムも第3回となりました。第2回までは肩周囲や首の骨の構造やどうして肩こりが起こってしまうのか体の中で起こっている出来事を説明してきました。

この回からは数回に分けて、日常生活での肩こりの具体的な原因をご説明していこうと思います。

 

まず、一つ目の原因として長時間同じ姿勢、好ましくない姿勢の保持ということが挙げられます。

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上記のような姿勢をとっている場合や、姿勢を変えることなく長時間作業を続けた場合に肩こりが発生しやすくなります。

好ましくない姿勢とは、背中が丸くなっている猫背で、両腕が胴体よりも前に垂れ下がった状態です。また、顎を突き出し胴体よりも顔が前へ突き出された状態(何かを覗き込むような格好)もよくありません。この姿勢を取り続けると前回も説明したように首の後ろや肩周りの筋肉が必要以上に使い過ぎてしまい、疲労や痛みへ移行していきます。一時的にこの姿勢をとることは問題ありませんが、日常生活の中でそのような姿勢を長時間とり続けていると、筋肉は働き続ける必要が出てきます。そうすると、筋肉自体が収縮し続けることにより血管を圧迫し、筋肉が酸欠となり“こり”が生じるため良くありません。

 

二つ目の原因として冷えすぎるといったことが挙げられます。

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冬やエアコンの効きすぎる部屋にいるなど、外気温が下がると、体温を上げるために筋肉が収縮し、熱を産生します。その状態が続くと筋が緊張し続けるようになってしまい、肩こりの原因となります。寒い季節になると、首をすくめたくなりませんか?首周囲の血管から散熱するのを防ぐために肩の筋肉が収縮する防御反応になります。この動作も長時間行うと肩の筋肉が疲労を起こし肩こりの原因となることがあります。寒い日はマフラーやストールを使用し、首や肩を冷やさないように気を付けてください。

 

三つ目の原因として眼精疲労挙げられます。

眼の疲れが、肩こりに影響を与えるケースもあります。

適切に視力矯正がなされていないことが、眼の疲れを招く理由の第一位を占めています。長期間、近視や遠視などの視力の障害があるのに、視力を矯正するための眼鏡やコンタクトレンズを使用しないでいると、眼自体はもちろんですが、眼の周りの筋肉、そして体全体の筋肉をも緊張させます。これは、対象物にピントを合わせるため頭の位置を微調節しているために支えている首の筋肉が使い過ぎてしまうためです。

特に近視があるのに視力矯正していない人が本を読んだりコンピュータで作業すると、自然と身を乗り出したり顔を対象物に近づけるなどしてしまうため、姿勢が悪くなってしまいます。これらが肩こりを招くといわれています。

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以上の三つ以外にも原因があります。次回はその他の原因についても詳しくご説明していこうと思います。

肩こりにも必ず原因がありますので、思い当たることがあった場合は出来る範囲で意識して改善してみてください。


普段でもこのような原因で肩こりを起こすのをご存じの方が大勢いらっしゃると思います。しかし、なぜこのような原因が肩こりを引き起こすのか詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか?

肩こりも含め、体の不調は原因が存在します。その原因を予め知っていると、どのように日常を気を付ければいいか。また、どのようにすれば改善できるかがわかってくると思います。

 

次回は引き続き、肩こりの具体的な原因を説明していきます。

 

 

肩こりについて(原因)

今回は第2回目となります。肩こりの原因を説明します。

昨今デスクワークや携帯を見たりと肩甲骨を固定し、頭を前に傾けて生活することが多くなりました。人間の頭は約5kgもあり、頸椎(首の骨)はその重さを支えるために緩やかなS字カーブを描いてスプリングのように重さを分散しています。

頭を前に傾けると顎が前に出てきます。その状態で長時間のデスクワークなど同じ姿勢が続くことによって、頭を支えるために首の後側の筋肉が働き続けます。頭を前に傾けた姿勢で頭の重さを支え続けることにより頸椎のS字カーブが崩れ、いわゆるストレートネックという状態になります。正常ではS字になっている頸椎がストレートになることでクッション性が低下し、頭の重みが特定の筋や靭帯にストレスとなります。

そうすると首から肩にかけて負担がかかる場所が限られ、首を支える筋肉に過剰に負担がかかり続けます。その状態が続くと筋が硬直し、疲労物質が蓄積し激しい痛みを引き起こします。さらに頭が前に出た分バランスをとろうと骨盤が後傾(後ろにたおれる)し、脊柱が後弯(猫背なること)します。結果、頭部と両腕を支えるために僧帽筋、肩甲挙筋といった背中側の筋肉が引っ張られこわばり、さらに胸の筋肉(大胸筋、小胸筋など)が短縮し、肩が前に出て下がった状態になったまま戻りにくくなります。そうなると、肩甲骨周囲の筋が固まり、姿勢が固定され、頸椎を含む脊柱(背骨)が動かなくなることで首が回らなくなったり、一定の高さ以上肩が上がらなくなります。

首や肩が動きにくくなった状態で首や肩を動かし続けると、頸椎疾患(頸椎椎間板症、変形性頸椎症など)や肩関節疾患(五十肩、インピンジメントショルダーなど)へ二次的に移行することがあります。

 

姿勢影響 首 姿勢影響 肩

姿勢の変化でここまで首と肩の動きが制限をされてきます。

いつもとっている姿勢は悪くないでしょうか?

心がけ一つで予防できることもあります。肩こりにお悩みの方はここから初めてみてはいかがでしょうか。

 

次回は具体的な原因を詳しくお伝えしていきます。

 

肩こりについて(頚部のしくみ)

本年から定期的にコラムを載せて私たちが持っている知識を皆様に発信できればと思っています。

最初は日常で良く目にし、皆様が経験したことが多い肩こりを中心に話をしていきます。

今後、肩こりの原因、メカニズム、対処法等何回かにわけて掲載していきます。

第1回目は肩こりを引き起こす筋肉とその周辺の構造をご説明致します。

 

肩こりを引き起こす主な筋肉

・僧帽筋(そうぼうきん):後頭部から鎖骨や肩甲骨の端(腕に近い部分)と、背骨から肩甲骨の内側の間にある筋肉

・肩甲挙筋(けんこうきょきん):後頭部から肩甲骨の内側につく筋肉

・脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん):背骨に沿って張っている筋肉

 

            僧帽筋         肩甲挙筋      脊柱起立筋

無題

この3つの筋肉は、力を抜けば重力に引かれて前へ落ちてしまう頭を持ち上げている筋肉なので、「抗重力筋」と呼ばれますこの抗重力筋がなんらかの原因で疲労を起こすと、肩こりになるわけです。

 

頸椎の働き

1、重い頭と腕を支える。

2、頭を動かす。

3、神経を保護する。

無題1

中央の図のように正常な首の骨は後方に反っていて、重い頭を支えています。頸椎は適度にカーブすることでスプリングのように機能し、重たい頭の重みを適度に分散させています。頚椎は骨(7個)と椎間板が交互に組み合わさった構造をしています。脊髄神経はこの骨の真ん中の管腔構造の部分(脊柱管)を通って存在しています。骨と骨の間の小さな穴(椎間孔)からはこの脊髄神経からわかれた神経根と呼ばれる細い神経が出てきます。神経根は左右8対あり、それぞれ肩、腕、指などに到達し、筋を支配しています。

姿勢が悪くなると一番右の図のように頸椎が真っ直ぐになるストレートネックと呼ばれる状態になってしまいます。前述したようにカーブによるスプリング機能がある頸椎が真っ直ぐになってしまったらどうなってしまうでしょうか?

 

次回は原因についてお話をしたいと思います。