前回に引き続き、膝の前十字靭帯損傷についてお話しします。
今回は前十字靭帯損傷の手術についてお話ししたいと思います。
前回もお話ししましたが、前十字靭帯が切れてしまうと膝の安定性が低下してしまいます。
日常生活では階段昇降や方向転換をする時など膝が抜けるような「膝崩れ」という現象が起きる事があります。
またスポーツ選手では競技中にストップやターンなどのステップ動作やジャンプの着地などで「膝崩れ」といった現象が起きてしまう事があります。
この「膝崩れ」を繰り返してしまうと膝の中にある半月板や軟骨を傷つけてしまい、膝の状態がもっと悪くなってしまいます。
そこで、再建術という関節鏡での手術を行います。
当院もこの手術を行い、患者さんの不安を取り除くお手伝いをさせて頂いております。
では、どんな方法で手術を行うのでしょうか。
この手術の場合、傷口は4つです。
お皿の下に2ヶ所、すねの膝近くの内側に1ヶ所、太ももの外側に1ヶ所です。
太ももの傷は大きなものではないので縫う事はしません。
この手術は、自分の腱を使って靭帯を作成していきます。
腱というのは筋肉と骨を繋ぎ合せる非常に強度の高い組織です。
一般的に前ももの大腿四頭筋という筋肉の腱である「膝蓋腱」と裏ももの内側にある筋肉の半腱様筋(場合により薄筋という筋肉も)という筋肉の腱を利用して行う2通りの方法で再建術が行われています。
当院では主に後者の「半腱様筋」を利用した手術を行います。
まずは、膝蓋骨の下に2つの傷口を作成し関節鏡を入れて関節内を確認します。
関節の状態を確認後、今度はすねの内側から半腱様筋を取る作業を行います。
摂取した半腱様筋の長さが足りなかった場合、薄筋という筋肉から腱を取り除きます。
この接種した腱を直径約8~10cmの太さにして移植腱を作成します。
今度はすねの脛骨と太ももの大腿骨に、ドリルを挿入し移植腱を通す通路を作成します。
その作成した通路に、先端にエンドボタンというものをつけた移植腱を挿入していきます。
このエンドボタンが大腿骨側で移植腱を支えてくれます。
最後に、挿入した部分の移植腱をボルトで固定して再建術は完成です。
この様な流れで前十字靭帯の再建術は行われていきます。
これで構造的に安定した膝を作る事が出来ました。
今度は手術して作り上げられた膝を再度自分の膝にするためのリハビリテーションを行っていく事になります。
次回はこのリハビリテーションについて説明していきます。