NEWS
お知らせ
コラム~肩関節脱臼③~
2015/10/16
今週は肩関節脱臼の治療法についてお話します。
まず、脱臼してしまった肩はなるべく早く整復することが大切です。
当院ではスティムソン法という整復法を採用しています。
スティムソン法とは、
- 対象者はうつぶせでベッドに寝る。
- 脱臼した腕に重錘を付ける。
- 腕をベッドの端から垂らす。
そのままリラックスした状態で20分程待つと、自然と骨頭が元の位置に戻っていきます。
肩甲骨を浅いお皿に、骨頭をお皿より大きいボールに例えると、脱臼している肩はお皿からボールがこぼれそうになっている状態といえます。
これをスティムソン法で肩をリラックスさせることでボールがつるんとお皿に戻っていきます。
初回脱臼時の整復後には固定期間を3週間設けています。
固定姿位は、わきにつけた肘を90°に曲げた状態で、肩を外に捻る外旋位と、内に捻る内旋位での固定法があります。
<外旋位固定>
<内旋位固定>
内旋位に比べて外旋位固定では、脱臼した際に剥離した組織が密着した状態で修復を図れるため、より脱臼前に近い状態に回復するといわれています。
しかし、外旋位固定は腕を体の外に開くことになるために幅を取り、日常生活を送るうえであまり実用的ではないという側面もあります。
脱臼を繰り返し、肩の組織が脆弱化したことで小さな衝撃でも脱臼してしまうような状態、反復性脱臼を呈してしまった場合には、手術での治療も選択されます。
当院ではバンカート法を行っております。
バンカート法とは、脱臼した際に剥離した関節唇を縫合し、糸のついたスーチャーアンカーと呼ばれるビスで固定します。
このようにして、脱臼により損傷した組織を縫合し、固定することで安定性を高め、回復を促進します。
今回は、脱臼後の処置・治療についてお話しさせていただきました。
次回は、脱臼後のリハビリについてお話しさせていただきたいと思います。
コラム~肩関節脱臼②~
2015/10/8
前回に引き続き、肩関節の脱臼についてお話します。
肩関節脱臼には外力による外傷性と非外傷性があります。
肩関節は大きな可動域を持つ反面、その分だけ不安定な状態にあると言えます。
肩関節は骨による支持性が低い分を軟部組織と呼ばれる関節包や靭帯、腱板などによってカバーされていますが、スポーツでの接触や転倒などによる外力が加わると支えきれず脱臼してしまうこともあります。
また、肩関節が脱臼する方向として、前方、後方、下方の3つがありますが、外力による脱臼のほとんどを占めるのが前方への脱臼です。
腕の姿位では、肩関節の外転(体の横から腕を開くような動き)、外旋(腕を親指側へ捻じるような動き)、水平伸展(腕を肩の高さまで上げた状態で背中側へのばす動き)となります。
この理由として、解剖学的に肩関節前方の支持性が低いことが挙げられます。日常での一例では、転倒した際に腕を開き(外転)、伸ばしたまま手をついてしまい、腕が背中にまわる(水平伸展)ような衝撃がかかってしまい、脱臼に至ります。その為、肩甲骨の関節面に対して上腕骨が前方に外れてしまうことから、前方への脱臼が多くなります。
脱臼した際には、関節周囲にある組織の損傷を伴う場合があります。その代表的な例が、Bankart病変とHill-Sachs病変です。
○Bankart病変とは、脱臼時に骨頭が関節窩に衝突し、関節唇の前下方部が剥がれることや、摩耗や欠損することです。
○Hill-Sachs病変とは、脱臼時の骨頭と関節窩の衝突により、骨頭の後外側に陥没骨折が起きることです。
これらの病変をきたすことで、脱臼を整復後も病変部位への外力には弱くなり、脱臼を繰り返してしまうことが多くなります。これを反復性脱臼といいます。脱臼を繰り返すことで更に軽微な力によって脱臼をしやすくなってしまうので、しっかりとした整復や治療が必要となります。
今回は、脱臼が起きる流れや起きた際に生じる事についてお話しさせて頂きました。
次回は、治療について説明させて頂きたいと思います。
コラム~肩関節脱臼①~
2015/10/1
今回は肩関節脱臼についてお話させて頂きます。
肩関節は人体で最も可動域が大きい関節であり、脱臼しやすいとされる部位です。
最初に簡単に肩の構造について説明させて頂きます。
まず、肩関節は5つもの関節から成り立つ複合体であり、これらが協調的に働くことで安定性を保ちつつ自由度の高い肩の動きを可能にしています。
その5つとは、
①肩甲上腕関節
②胸鎖関節
③肩鎖関節
④肩甲胸郭関節
⑤第2肩関節(肩峰下関節) です。
詳しい場所はこちらになります。
そして、実際に脱臼するのは①肩甲上腕関節です。
そもそも脱臼とは関節面同士の適合性が完全に失われたものとされ、自然に整復した状態を亜脱臼といいます。
この肩甲上腕関節を構成する組織には、
①肩甲骨の関節窩と上腕骨頭
②その周囲にある線維性組織である関節唇、関節包靭帯
③さらに②の外周を取り巻く腱板と呼ばれる腱組織 があります。
更にこの組織たちは、静的な安定性と動的な安定性を保つ組織として分類できます。
静的、つまり動かしていない状態での安定性を高めてくれているのは関節唇、関節包、靭帯です。
関節唇とは、その名の通り肩甲骨の臼状の関節面の外周を唇の様に縁取っている組織の事です。この関節唇があることで関節の接触面積が増え、安定性を高めてくれています。
動的、動かしている状態での安定性を高めてくれているのは、主に棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という筋肉たちです。
この4つは腱板とも呼ばれ、上腕骨を骨の軸に対して回旋させる作用のある筋肉たちです。
この筋肉たちはいろんな方向から上腕骨頭をとりまくように付着しています。
そのため、動作の時に骨頭を関節面に引きつけることで安定性を高めてくれているのです。
また上腕二頭筋も骨頭の動きを制動してくれています。
また、筋肉にはForce coupleと呼ばれる筋肉同士の仲間が存在します。
この仲間である複数の筋肉が協力して働くことで単一の筋肉の負担を減らしてくれています。
肩関節では、体の横から腕を開く外転運動の際に三角筋と棘上筋がForce coupleを形成しています。
この2つは同じ外転の働きをしてくれますが、最初に腕を開いていく際には棘上筋が骨頭を関節面に引きつけ、肩甲骨に対して上腕骨の関節面が滑る動きを助けています。
その上で、筋肉自体が大きく、発揮するパワーも大きい三角筋が外転運動を可能にしてくれているのです。
このように、肩では色々な組織が協調的に働くことで、大きな運動範囲を持ちながらも安定した運動を可能としているのです。
今回は肩関節の解剖についてお話しさせて頂きました。
次回は、実際にどのようにして脱臼が起きるのかを説明させて頂きたいと思います。
インフルエンザ予防接種開始のお知らせ
2015/10/1
平成27年10月5日よりインフルエンザワクチンの予防接種を開始致します。
予約制となっておりますので、ご希望の方は来院時受付窓口までご連絡ください。
コラム~前十字靭帯損傷④~
2015/09/25
今回は手術後の膝前十字靭帯損傷のリハビリテーション(以下:リハビリ)についてお話しします。
手術により、構造的な膝の安定性は獲得出来ました。
しかし、手術したからといって術後すぐには自分が思っているように自由に膝は動いてくれません。
そこで今度は新たに再建された膝を自由に動かせるようにリハビリをして、日常生活に不安なく活動出来るようにし、徐々にスポーツ復帰を目指していきます。
ここではリハビリについて3つに分けてお話ししていきます。
①手術後日常生活に向けて、②スポーツ動作開始に向けて、③競技復帰に向けて
①手術後日常生活に向けて
この時期は手術後の炎症管理をしっかりと行う時期です。
アイシングを行い炎症症状の改善を図ります。
また膝は体重を支える関節です。
炎症に応じて歩行時は松葉杖を利用します。
更に、サポーターを付けて行動してもらいます。
炎症や時期に応じて徐々に可動域を増やしていきます。
しかし、靭帯はまだ身体に馴染んでおらず、曲げ過ぎたり伸ばし過ぎたりすると手術して靭帯を留めた部分や、靭帯が緩んでしまう事があります。
そこで1ヶ月位かけて120°位まで曲げられるようにしていきます。
伸ばしに関しても同じように徐々に伸ばしていきます。
筋力は手術する事で低下してしまいます。
炎症が増強しないように筋力トレーニングしていきます。
②スポーツ動作開始に向けて
2ヶ月程度すると日常生活でのサポーターを外し歩く事は可能になり、徐々に自転車やジョギングが可能になっていきます。
3ヶ月すれば靭帯の強度もより強くなり筋力トレーニングもハーフスクワットやランジなどの動作も開始する事が出来ます。
曲げも140°位は曲げる事が可能になります。
4ヶ月程からダッシュの50~70%の強度で直線を走る事が可能になります。
また、重りを使ったレッグエクステンションも徐々に開始していきます。
③競技復帰に向けて
4~5ヶ月頃から80~90%で走行は可能になります。
曲げる角度も正座を目標に曲げる練習を行っていきます。
またサイドステップやクロスステップなどのステップ動作も徐々に開始します。
怪我をした際に接触せずに動作の中で怪我した場合はこの動作練習が重要になります。
一つずつ動作を確認しながら細かな動作が行えるようにしていきます。
更に軽いジャンプ動作や専門種目の基本動作も開始していきます。
バスケットなら軽いドリブルやシュート、サッカーなら基礎練習などです。
6ヶ月を過ぎた頃にはダッシュが行えるようになっていきます。
動作練習もスピード、強度を上げ、徐々に動作中にボールなどを織り交ぜて専門動作の練習を開始していきます。
ジャンプに関しても連続ジャンプなど強度を高めていきます。
この頃からチームのウォーミングアップに参加したり、強度の低いチーム練習に部分的に復帰していきます。
対人に関しても動作を確認し少しずつ練習を開始していきます。
再発のリスクを減らすためにテーピングやサポーターを巻く事もあります。
7ヶ月以降は復帰に向けてリアクション動作や対人練習を積極的に行っていきます。
チーム練習へは数的優位な局面から数的不利な状況に移行し、少しずつ試合へと復帰していきます。
時期はあくまで目安となりますが、状況によって変更していきます。
復帰後も再発予防のために筋力トレーニングや動作練習をしていく必要があります。
これらに関して当院では術前から競技復帰まで理学療法士がリハビリを行っていきます。
トレーニングセンターも併設しているので、怪我する前の状態に安心して戻れるようお手伝いさせて頂きます。
今回で膝の前十字靭帯損傷に対してのお話は最後になります。