スポーツ整形外科・一般整形外科・リハビリテーション科

コラム

コラム~腱板断裂②~

2015/11/18

 

前回に引き続き腱板断裂についてお話しさせて頂きます。

腱板断裂が起こる原因には大きく分けて3種類あります。

 

1つ目は肩関節の解剖学的構造によるものです。

腱板は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という4つの筋肉で構成されていて、その中でも腱板断裂の多くは棘上筋に生じるとされています。

 

棘上筋は棘上窩という肩甲骨の上部から始まっていて、肩峰と肩甲上腕関節の間の狭いトンネルを通過しています。

腕を上へ挙げる時に、棘上筋は上腕骨頭を関節窩に引き付ける力を発揮することで円滑な肩関節の動きができるようになります。

しかし、何らかの原因で棘上筋による関節窩へ引き付ける力が発揮されず、腕を挙げるときに上腕骨頭が上へ持ち上がってしまうと肩峰と肩甲上腕関節の間のトンネルはさらに狭くなります。

 

そのとき、棘上筋が肩峰との衝突や摩擦を繰り返すと、損傷や断裂が生じてきます。

このような腱板断裂は主に野球の投球動作やバレーボールのスパイクなどオーバーヘッドスポーツでの繰り返し動作に多く起こるとされています。

 

 

2つ目は、年齢や老化によるものです。

年齢や老化により腱板断裂が起こる原因はさらに①反復動作によるもの、②循環障害によるものの2つに分けられます。

 

  1. 反復動作によるものには野球やバレーボールのような肩を使うスポーツにより腱板断裂が起きる可能性が増加します。それだけではなく、洗濯や物干し、布団の上げ下ろしなどの家事動作も原因の1つとなる可能性があります。
  2. 循環障害によるものには、年齢とともに腱板に必要な血流が減少すると考えられており、栄養障害により県の老化を加速させます。さらに喫煙も循環障害を引き起こす原因の1つとされているため、腱板断裂の危険性が高くなります。

腱板断裂の多くはこれらの様々な原因があり、長い時間をかけてすり減った結果引き起こされることが多く、さらに、使用頻度の高い利き腕に多く発症するとされています。

 

 

3つ目は、外傷によるものです。転んだ時に手をついたとき、肩を強打したときに多く、特にコンタクトスポーツや交通外傷など大きな外力により発症することが多いです。

 

 

腱板断裂の症状は、肩関節痛が最も多く、筋力低下や腕が挙げられない(可動域制限)などがあります。肩関節痛には腕を挙げる時の痛みや夜間痛があり、夜間痛には、同じ姿勢を続けることができない、肩を下にして眠れないなどがあります。

筋力低下では、ハンドルを握って長く運転できない、後ろの物を取れない、下の物は持ち上げられるが、物を上へ差し上げられないなどがあります。可動域制限は断裂後の炎症や痛みによって起こります。

 

これらの症状は腱板断裂で必ずしも起こることではなく、痛みや筋力低下、可動域制限がほとんどない無症候性のものも多く存在しているとされています。

 

 

今回は腱板断裂がどのようにして生じてしまうのか、腱板断裂が生じてしまったらどのようなことが起こるのかをお話しさせて頂きました。

次回は治療法についてお話しさせて頂きたいと思います。

 

 

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