スポーツ整形外科・一般整形外科・リハビリテーション科
コラム~肩関節脱臼④~
2015/10/22
今週は肩関節脱臼のリハビリについてお話します。
反復性肩関節脱臼は、外傷による解剖学的な損傷と、受傷後に関節を安定させる機構が破綻したままでの使用による二次的な損傷が重なり合い、起きていることが多いです。
そのため、術後のリハビリテーション(以下、リハビリ)は損傷による機能障害の改善を主とすることはもちろん、損傷している部位以外に対しても訓練が必要となります。
術後のリハビリは期間によって大きく3つに分けられます。
①術後~3週目
リハビリでは、炎症や疼痛のコントロールを目的としたアイシングや、肩の可動域を確保する為に他動的に動かすことを行います。
術後早期では、損傷修復部位は不安定な状態にあるため、この時期は固定期間となります。リハビリ中は固定を外して動かしていきますが、管理された角度の範囲内での運動となります。
肩の固定によって肩甲骨や肘、手などの肩の近くの関節が硬くなることもあるため、患部外の運動も併せて行っていきます。
また、この時期は疼痛を避けようと別の部位に過剰な負担をかけるような姿勢や力みをしがちです。結果、これらによる二次的な疼痛も生じる場合もあり、不良姿勢の改善やリラクゼーションも行っていきます。
<肩甲骨の運動>
②4~8週目
この期間では、上記のリハビリに加えて出来る範囲での自動的な肩の運動も行っていきます。また、肩関節を動かす筋肉、特に腱板のトレーニングも開始されます。この際、筋、関節への負担を考慮して関節の角度を変えない状態でトレーニングを行うことが注意点となります。
<回旋筋トレーニング>
<三角筋(腕を外に開く筋肉)トレーニング>
③9~12週目
この時期になると縫合した関節唇の状態も安定するため、恐怖感なく肩を動かしていけるようになります。そのため、可動域の最終域でのストレッチや、負荷量を上げたトレーニングを行っていきます。
<負荷量の高い肩甲骨トレーニング>
写真の運動以外にもチューブなどで負荷を加えて回旋筋や肩周りの筋肉を鍛えていきます。
初回のコラムでお伝えした様に肩関節は多くの関節から成り立つ複合体です。そのため、どれか一つの関節の可動域や筋力を改善していくのではなく、患部の状態に合わせて個別の機能に沿ったアプローチを全体的に行っていく事が大切になるのです。
今回で肩関節脱臼についてのお話は終わりとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。