スポーツ整形外科・一般整形外科・リハビリテーション科

コラム

コラム~前十字靭帯損傷④~

2015/09/25

今回は手術後の膝前十字靭帯損傷のリハビリテーション(以下:リハビリ)についてお話しします。

 

手術により、構造的な膝の安定性は獲得出来ました。

しかし、手術したからといって術後すぐには自分が思っているように自由に膝は動いてくれません。

そこで今度は新たに再建された膝を自由に動かせるようにリハビリをして、日常生活に不安なく活動出来るようにし、徐々にスポーツ復帰を目指していきます。

 

ここではリハビリについて3つに分けてお話ししていきます。

①手術後日常生活に向けて、②スポーツ動作開始に向けて、③競技復帰に向けて

 

①手術後日常生活に向けて

この時期は手術後の炎症管理をしっかりと行う時期です。

アイシングを行い炎症症状の改善を図ります。

また膝は体重を支える関節です。

炎症に応じて歩行時は松葉杖を利用します。

更に、サポーターを付けて行動してもらいます。

 

炎症や時期に応じて徐々に可動域を増やしていきます。

しかし、靭帯はまだ身体に馴染んでおらず、曲げ過ぎたり伸ばし過ぎたりすると手術して靭帯を留めた部分や、靭帯が緩んでしまう事があります。

そこで1ヶ月位かけて120°位まで曲げられるようにしていきます。

伸ばしに関しても同じように徐々に伸ばしていきます。

 

筋力は手術する事で低下してしまいます。

炎症が増強しないように筋力トレーニングしていきます。

 

②スポーツ動作開始に向けて

2ヶ月程度すると日常生活でのサポーターを外し歩く事は可能になり、徐々に自転車やジョギングが可能になっていきます。

3ヶ月すれば靭帯の強度もより強くなり筋力トレーニングもハーフスクワットやランジなどの動作も開始する事が出来ます。

曲げも140°位は曲げる事が可能になります。

4ヶ月程からダッシュの5070%の強度で直線を走る事が可能になります。

また、重りを使ったレッグエクステンションも徐々に開始していきます。

 

③競技復帰に向けて

45ヶ月頃から8090%で走行は可能になります。

曲げる角度も正座を目標に曲げる練習を行っていきます。

またサイドステップやクロスステップなどのステップ動作も徐々に開始します。

怪我をした際に接触せずに動作の中で怪我した場合はこの動作練習が重要になります。

一つずつ動作を確認しながら細かな動作が行えるようにしていきます。

更に軽いジャンプ動作や専門種目の基本動作も開始していきます。

バスケットなら軽いドリブルやシュート、サッカーなら基礎練習などです。

 

6ヶ月を過ぎた頃にはダッシュが行えるようになっていきます。

動作練習もスピード、強度を上げ、徐々に動作中にボールなどを織り交ぜて専門動作の練習を開始していきます。

ジャンプに関しても連続ジャンプなど強度を高めていきます。

この頃からチームのウォーミングアップに参加したり、強度の低いチーム練習に部分的に復帰していきます。

対人に関しても動作を確認し少しずつ練習を開始していきます。

再発のリスクを減らすためにテーピングやサポーターを巻く事もあります。

 

7ヶ月以降は復帰に向けてリアクション動作や対人練習を積極的に行っていきます。

チーム練習へは数的優位な局面から数的不利な状況に移行し、少しずつ試合へと復帰していきます。

 

時期はあくまで目安となりますが、状況によって変更していきます。

復帰後も再発予防のために筋力トレーニングや動作練習をしていく必要があります。

 

これらに関して当院では術前から競技復帰まで理学療法士がリハビリを行っていきます。

トレーニングセンターも併設しているので、怪我する前の状態に安心して戻れるようお手伝いさせて頂きます。

今回で膝の前十字靭帯損傷に対してのお話は最後になります。

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