スポーツ整形外科・一般整形外科・リハビリテーション科
コラム~前十字靭帯損傷③~
2015/09/18
前回は膝の前十字靭帯を損傷してしまった後に行われる再建術についてお話をしました。
今回と次回はリハビリテーション(以下:リハビリ)についてお話しをしていきます。
この怪我は手術した後だけではなく、手術前にも約1ヶ月リハビリを行います。
リハビリを行わないで手術をしてしまうと、手術後の予後が良くありません。
そこで今回は手術前のリハビリについて①炎症症状の改善、②可動域の改善、③筋力の維持向上、④動作の改善を中心に説明をしていきます。
①炎症症状の改善
炎症とは「腫脹(腫れ)」「熱感」「発赤」「疼痛(痛み)」「機能障害」の事を指します。
前十字靭帯損傷をしてしまうと、これらの炎症症状が出現します。
すると膝を動かす事が困難になってしまいます。
この状態で手術してしまうと、手術後も曲げ伸ばしが出来なくなり、再建した靭帯の成熟度が低下してしまうなどの問題が起きます。
その為、手術前に炎症症状を改善する必要があります。
そこで行う事は、RICE処置という事を行ってもらいます。
RICE処置とはなにか…
R:REST安静、I:icing冷却、C:Compression圧迫、E:elevation拳上
単語の頭文字を取ったもので、炎症を改善するには必要不可欠なものです。
方法として、氷嚢やビニール袋に氷を入れて、15~20分前後患部を冷やしてもらいます。
その後、30分程空けて再度またRICE処置を行います。
怪我をした後は何回もこの処置を繰り返して下さい。
しかし、氷が冷た過ぎて凍傷を起こしてしまう事もあります。
利用する際に水を一緒に入れてあげると少し溶けるので凍傷を防ぐ事が出来ます。
・RICE療法:患部にアイスパックの上からバンテージを巻き付け圧迫した状態でなるべく高い位置にします。
②可動域の改善
可動域とは関節が動ける範囲の事です。
炎症が軽減していくと徐々に膝を動かす事が出来るようになってきます。
少しずつ、曲げ伸ばしをして動かしてきます。
前十字靭帯損傷を行い炎症により関節を動かさない期間があると徐々に膝関節は硬くなってきてしまいます。
すると膝関節を支える筋力が弱くなり、動作がスムーズに行えなくなります。
そこで、状態に合わせて徐々に可動域を広げるようリハビリを行っていきます。
・ヒールスライド:無理のない範囲で手などで介助しながら曲げていきます。
③筋力の維持向上
炎症や関節の動きを改善していきつつ今度は筋力を維持向上させていきます。
先にも述べましたが、関節を動かさない事で筋力はどんどん弱くなります。
また、手術をすると必ず筋肉はやせ細り、弱くなってしまいます。
その為、手術前にどれだけ筋力を維持向上させる事が出来るかがポイントになっていきます。
だからといって急にスクワットやジャンプ運動を行ってしまうと、また膝崩れを起こしてしまったり炎症を引き出してしまったりする危険があります。
まずは関節を動かさないで行う運動を行い、徐々に関節を動かしながら行う運動を行っていきます。
そして体重をかけて行う運動へと進んでいきます。
・タオルつぶし:膝の下にタオルを入れ、踵が床から離れないようにしながらタオルを潰すように力を入れます。
④動作の改善
①~③を改善していきながら今度は歩行を中心とした動作の改善を行っていきます。
怪我をしてしまうと身体には防御反応がおこり本来の動きとは異なった動作をしていきます。
時にその動作は患部へストレスのかかる動作となってしまう事があります。
そこで、歩行の練習など動作改善を行っていきます。
以上の内容を中心に手術前にリハビリを行っていきます。
これらは、ただ行うのではなく膝関節に負担がかからないように進めていく事が重要です。
そこで、膝の構造を知った理学療法士の指導の下、関節に過度なストレスがかからないよう一緒に運動を行っていきます。
次回は手術後のリハビリについてお話をしていきます。